全身の筋肉量が減少し、筋力と身体機能が低下する病態です。加齢により生理的に筋力低下が起こるため、75~79歳の男女のおよそ2割はサルコペニアに該当するといわれています。
サルコペニアになると、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本的な動作に影響が生じ、介護が必要になったり、転倒しやすくなったります。
また、各種疾患の重症化や生存期間にもサルコペニアが影響するとされ、現在は様々な診療科にまたがってサルコペニアが注目されています。
そこで今回はサルコペニアの基礎知識から、簡単にチェックできる方法・対策について解説したいと思います。
サルコペニアの分類
サルコペニアには、加齢による「一次性サルコペニア」と、加齢が原因でない「二次性サルコペニア」の2つのタイプに分類されます。
二次性サルコペニアは、関連する要因によってさらに細分類されるため、それぞれの要因ごとの特徴をお伝えします。
《二次性サルコペニアの分類》
活動量に関連するサルコペニア
寝たきりや運動不足が要因となって筋肉量が減ることで起こります。デスクワークが中心で日頃の活動量が少ない方は、活動量が原因であるサルコペニアになってしまう可能性があります。
疾病に関連するサルコペニア
心疾患やがん、外傷など病気やケガが要因となって引き起こされます。
栄養に関連するサルコペニア
エネルギーやタンパク質不足などが原因となります。 また、服用している薬の副作用によって、食欲不振を起こしている方も該当します。
サルコペニア特徴について
加齢による筋力の低下は誰しも経験することですが、通常以上に筋力が低下してしまう状態がサルコペニアです。
それに伴い、以下のような様々な症状が表れます。
・転びやすくなる、頻繁につまずく
・歩くスピードが遅くなる、青信号の間に横断歩道を渡りきれない
・握力が低下してペットボトルのキャップが開けにくい
・短距離の移動や立っているだけでも疲れやすい
・手すりにつかまらないと階段を上がるのが困難
セルフチェックをご紹介
サルコペニアのセルフチェック
5つの質問に答えて、それぞれの合計点数を計算してください。
①4〜5kgの物を運ぶのにどれくらい大変ですか。
全く大変ではない=0点 少し大変=1点 とても大変、全くできない=2点
②部屋のなかを歩くのがどのくらい大変ですか。
全く大変ではない=0点 少し大変=1点 とても大変、補助具を使えば歩ける、全く歩けない=2点
③椅子やベッドから移動するのがどのくらい大変ですか。
全く大変ではない=0点 少し大変=1点 とても大変、助けてもらわないと移動できない=2点
④階段を10段のぼるのがどのくらい大変ですか
全く大変ではない=0点 少し大変=1点 とても大変、またはのぼれない=2点
⑤この一年で何回転倒しましたか。
ない=0点 1〜3回=1点 4回以上=2点
合計が4点以上の場合、サルコペニアの可能性があります。
ふくらはぎでチェック!

ふくらはぎは筋肉量減少の兆候が表れやすいため、ふくらはぎの太さで簡易的にサルコペニアの可能性をチェックします。
チェックの方法は「指輪っかテスト」と呼ばれ、ふくらはぎの筋肉量が体格と比較して適正かを確認できます。
※この方法は脂肪・むくみの要素が不確定なため、正確に筋肉量を測定することはできません。
〈指輪っかテストの手順〉
1.椅子に座り、両足を床につける ふくらはぎ(利き足でない方)の最も太い部分を、両手の親指と人差し指で輪っかを作って囲う
2.指の輪っかがどのような状態かで評価する 利き足がわからないときは、両足でチェックしてください。
指同士がつかずふくらはぎを囲めないくらいの太さ:サルコペニアの新規発症リスクは低い
指で作った輪っかとふくらはぎとの隙間が大きいほど:サルコペニアの新規発症リスクは高い その場合、筋肉量の減少や低栄養に注意しなければなりません。
サルコペニアの治療と予防
サルコペニアが疑われる場合、医療機関では握力測定、身体機能測定、専用の機械による筋肉量の測定を実施して、サルコペニアに該当するかを判断します。
診断された場合は、食事や運動などの生活指導を受け、筋肉量の減少を予防していきます。
バランスの良い食事と運動

日常生活のなかで筋肉量が減少しないように心掛けるだけで、サルコペニアの予防につながります。
バランスの取れた食事と適度な運動で予防しましょう。
筋肉のもとになるタンパク質を意識して食べる
筋肉の材料はタンパク質であり、タンパク質は肉、魚、卵、大豆製品、乳製品に多く含まれます。
ごはんやパンなどの主食だけで食事を済ませるのではなく、タンパク質が多く含まれる主菜もしっかりと食べるようにしましょう。
適度な運動で筋肉を鍛える
適度な運動は筋肉量を増やすのに効果的です。
スクワットなどの筋力トレーニングと、ウォーキング、水泳、ラジオ体操などの有酸素運動を少しずつ日常生活に取り入れて、体を動かす習慣を作っていきましょう。